一食15種類以上の野菜ランチ (後編)

Feel Good Foodsのリーダーのヨシさんのバックグラウンドやこの会社を立ち上げた経緯についてのインタビューの後半です。インタビューの前半を読んでいない方はこちらからどうぞ

FGF: まずはどんな活動から始めたのですか?

Yoshi: パンの製造に関わり、約1年半たった頃でしょうか。パン作りで得たものをどのように活用できるだろうか?と、考えるようになりました。

そこで、同僚と一緒に教会で子供たちを対象にしたピザ作り体験のイベントを開くことにしました。食材は、レストランのオーナーに寄付してもらい、職場の機材を使ってスタッフに手伝ってもらい、皆でイベントを運営しました。子供たちにとって、ピザは日常食にもかかわらず、作るのは初めてだったようで、真剣に作っていました。とても楽しい経験でした。

そういうことをしている間に、アメリカではコロナ緊急宣言に入ってしまいました。

レストランのスタッフほぼ全員が解雇期間に入ってしまいました。アメリカ政府は、すぐに失業保険と支援金を支給してくれました。仕事をしているときより収入が増え、時間ができたのです。

このチャンスをどうやって生かそうか。僕は、「おいしい」「健康」という二つの条件を満たすパンのレシピを探すことにしました。

試行錯誤の連続でした。それまではレシピ通りに作ることをやってきたわけですけども、ゼロから自分でレシピを作り始めたわけです。小麦を粒の状態で購入して挽きたての全粒粉を使って、食物繊維が沢山入っているパンを美味しく作ることに取り組みました。

そして完成したパンを、友達に週1回配っていました。街の中から、遠い所では郊外まで1時間ぐらい離れたところまで週1回、自転車で移動する生活スタイルになりました。

また製造が安定してきたと思うようになった頃、次のステップとしてパンを約50斤を、ホームレスの食事を無償で提供している教会に寄付するようになりました。そこでは、1日に何百食と食事を用意して、そこのシェフに連絡を取り、僕の作ったパンを教会で使ってくれないかと頼みました。

家で数個作るのと、一度に50個作るのでは製造時に出てくる問題がまた違いますから、試してみたかったんです。そういう意味では、何か学ぶことがあるだろうと。初めて焼いたパンは発酵させすぎて、爆発してしまったんですけどね(笑)。

FGF: 日本での活動のきっかけは何だったのですか?

Yoshi: 2021年、日本の生産者を訪問するための自転車旅行がきっかけですね。

サステナブル(持続可能)な農業とテロワール(その土地の味)ということをテーマに色々と下調べをしてから青森から帯広までの自転車旅行でした。弘前のシードル作り、石狩川のシャケ、富良野の農業、十勝の小麦粉などということについて話を聞くことができればと旅行をしました。

西日本と九州では1週間の農業体験に参加をさせてもらい、広島の上下町と福岡の八女市に滞在してその近辺の生産者を訪ね、農業や生産業にどんな問題があるのか、どんなことを考えてこの仕事に携わっているのかなど、話を聞かせてもらいました。

事前にアポイトメントをとらず、今考えるとかなり強引すぎましたが、ほとんどの農家さんは「わざわざ訪ねてくるような人は珍しい」と驚き、嬉しそうに話をしてくれました。

FGF: 生産者さんからお話の内容と、そこでどんな気付きがあったのでしょう

Yoshi: 2つあります。ひとつは日本の農業が続くのか、という危機感です。

環境面のサステナビリティーより、生産者のサステナビリティーに課題があることに気づいたんです。自然相手では、作物の生産予測は困難であり、市場に卸す場合は自分で値段設定ができない。これは、経済の理にかなっていない。生産者さんは、口を揃えて「後継者がいない」と話していました。

もう1つは、有機野菜が日本で広まらない背景です。アメリカでは、スーパーマーケットの商品の3−4割ぐらいのものがオーガニック商品であると聞いたことがあります。それは消費者のニーズがあり、選択肢を持てるということでもあります。日本では、現状選択肢を持つとは程遠い。それは市場が成熟していないと言えるのではないでしょうか。

有機栽培をしている農家さんに話を聞くと、ほとんどの方は、経済的な理由よりも、本人の信念で自ら栽培方法を選んでいるそうです。富良野で有機メロンを作っている農家さんに話を聞いた時は、情報もなく試行錯誤して土づくりから始めたので、売れるメロンができるまで10年かかったと言っていました。

今では毎年1万2千個も栽培するようになったのですが、にもかかわらず、現在でも売れないときは、普通のメロンと同じ値段で卸していると言っていました。需要が足りていないのだなと感じましたね。

ただこれは一概に消費者の意識などと簡単な問題ではないと思います。日本は仕事からの拘束時間が長いにも関わらず、賃金が安い。そしてこの何十年と横ばいが続いていてもっと大きな日本経済の構造的な問題があるので、一丁単なことではないと考えています。

FGF: 自転車旅行の後は何を?

Yoshi: 日本の食の業界で就職活動をしました。

文化的にも慣れていないところで、自分に合った仕事を見つけるのは、大変でしたね。働き方改革がアメリカに比べて日本は全体的に遅れていて、みんなこんな環境で1日の3分の1の時間を過ごしているのかと思いました。

就職活動と並行して、日本でも、アメリカでやっていたようにパンを配り、名刺代わりに試食をしてもらっていました。そうしているうちに、運命的な出会いが訪れます。なんと、「パンをお店で売ってみないか」と提案して下さる人に出会うことができたのです。

全粒粉パンのオープンサンドに、野菜のスープがつくようなテイクアウトのセットを作り、外苑前にあるお店でプラントベースランチという名前で、週3回提供できるようになったのです。

FGF: 最初はどんな感じでしたか?

Yoshi: パン部門の仕事内容と異なり、全て一人で試行錯誤の連続でした。まず、アメリカで一緒に働いていた友達からアイデアをもらいながら、メニューを決めました。次に、食材を揃えるため、どこで食材を仕入れられるかを探しました。自転車で都内を走って探していました。

そうしているうちに、東京に20年以上も住んでいるユダヤ人からタヒニを、八女で訪ねた製粉所から小麦を、千葉や埼玉の農家を実際に訪ねて食材を集めることができました。そのお店は和食を中心とした食事を提供するお店でしたので、僕が提供するパンのオープンサンドを好む人とはちょっと違った客層だったかもしれません。それでも気長に置いていると、求めてくれる人が現れて。特に女性が試してくれていました。

どんな可能性があるのだろうと知りたくて、場所や形を変え、とにかく試していた時期です。外苑前だけでなく、中目黒や逗子にも展開しました。また、都内で一度だけディナーを提供したこともあります。

FGF: 今準備をしている計画は何ですか?

Yoshi: 5月から都内で始めるランチ提供の準備をしています。15種類以上の「植物」が美味しく食べられるテイクアウト、デリバリーのランチを目指しています。

雑穀米や抗生物質もホルモン剤も使っていない鶏肉を使ったり、ファラフェルなどの植物由来の食材も提供します。さらに、旬の野菜を中心としたお惣菜を常時6−8種類ほど用意する予定です。今回使う野菜も有機栽培や規格外の野菜を使います。これらの食材を自分に合った組み合わせで食べる。イメージとして近いのは、サラダバーでしょうか。栄養価の高い季節の野菜を、手軽に摂ることができる「カスタムランチ」としてぜひ楽しんでいただきたいです。

FGF: どんな人に今回のランチを試して欲しいですか?

Yoshi: 野菜中心の食事を楽しみたいという人たちですね。

野菜中心の食事というのはちょっと物足りなくて、「やっぱりお肉を食べたい」なんていう声がどこからか聞こえてきそうですが。視野をひろげて世界の料理を調べてみると、野菜中心の食文化って沢山あるんです。特にブルーゾーンなどの食事を見てみると納得いきますよね。

環境に合い、その作物が沢山収穫できたり、文化的又は宗教的な理由でお肉を食べない期間があったりして、その知恵が文化として根付いているんです。味付け一つでもおいしさの幅が広がります。野菜料理の可能性に興味のある方にはぜひお勧めしたいです。

そしてあえていうと男性の方にもおすすめしたいんです。

僕もそうでしたが、残念なことに男性の方が普段から食事や健康に気を使わない傾向にあります。結果としてどこの国の平均寿命を見ても男性の方が低いですよね。そういう意味では男性にも試してもらい、食と健康の関係について興味を持ってもらうきっかけになればとても嬉しいですね。

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